TEAM NACS 第16回公演 PARAMUSHIR ~信じ続けた士魂の旗を掲げて

これは名もなき戦士たちの物語である。


正直ここ最近のTEAM NACSの作品は見ていなかったのだが、終戦後が舞台いうことでいつもより笑いが少なめのシリアスな内容であった。
実際にあった話がモチーフということで、役柄がメンバーそれぞれのキャラに合わせたものであり、リアリティを大事にしたことがわかる。


戦争というどうしても重たくなってしまう話を軽やかにしてくれる大泉洋

少し頼りないが懸命に部隊をまとめようとする上官に森崎博之

いい意味で普通の感覚を持っている音尾琢真

絶望的な状況でも無邪気でいられる戸次重幸

やはり変人役が一番似合い、5人が共に戦う決心することができた言葉をくれる安田顕


役柄の他にもメンバーと重ねてしまう状況がいくつかあった。
まず北海道に攻めて来るロシア軍から北海道にいる人たちを守る話であり、それぞれの役も北海道出身であること。
寄せ集めの部隊である5人を敵国の言葉である「チーム」と表現した場面があったこと。
そして何よりそれぞれの役に守るべき者がいたこと。この舞台はメンバー全員が既婚者となり、家族を持った今だからこその作品だろう。


私はそれぞれが生い立ちを語り合う5人だけの場面が一番好きだ。
張り詰めた空気が続く中で、ここが一番素のメンバーの空気感に近いからだ。もしかしたら実際の部隊もこんな風に冗談を言い合うこともあったかもしれない。
しかし5人が親しくなっていくほど、せつない気持ちにもなった。これからロシア軍が攻めてくるのだ。別れが来るかもしれないのだ。
お互いを知っていく5人。でも戦争がなかったらお互いの存在さえ知ることのなかった5人。


劇中に「無名で死ぬな。名を残せ。」という言葉が出てくる。
女性よりも男性の方がこういう価値観に捉われる。女性はまあ、結婚して子供産んどけば上がりというか、悪くない人生だったということになるが、男性はそれだけではダメだったりするのかもしれない。歴史に名を残すような偉人に圧倒的に男性が多いのもそのせいだろう。普通のサラリーマンでさえこういうことを考え、苦しんだりするのだろうか?


この芝居の中では、何か大きいことをして歴史に名を残せという意味だと思うけど、現代ではそれは大きく変わってしまうのかもしれない。
現代では「名を残す」というのはお金のためだったり、自己顕示欲を満たすためだったりする場合が多い。何かを成し遂げたいというより、とにかく何でもいいから有名になりたいというような。そんな風に名前が残っても何の意味があるのだろう。


主人公たちは歴史に名を残すことはできなかったけど、自分が名づけ、守った子供の名前を残すことはできた。
記録には残らなかったけど、人々の記憶には残った。
歴史は偉人が作ったものではない。ある日突然変わったものでもない。
名もなき人々の日々の積み重ねなんだ。